通訳ガイドが書いた「地域の歴史が学べる観光ガイドブック」研修会
宇治市に以前住み、現在京都市在住の講師が、それぞれのお寺の住職から直接聞いたお寺の歴史や、とっておきの地元の情報をお話しします。
醍醐寺は秀吉が盛大に催した「醍醐の花見」で有名ですが、徳川の世になっても、なぜ影響力を持ちつづけることができたのでしょうか? その1100年の歴史を三宝院を中心に見ていきます。京都最古の木造建築である五重塔や、天下人の権力の象徴とされる「藤戸石」が鎮座する三宝院庭園、華麗な唐門や寝殿など、みどころ満載です。
萬福寺に一歩入ると、日本の寺院には見られない伽藍や仏像に出会うことができます。ここはまさに明朝の中国です。布袋さんは大陸的で大らかな表情をし、伽藍の並び方は、竜が水を飲むさまを示しています。かいぱん(木魚の原形)やこうもりの透かし彫りやガンジス河のワニ・マカラを見つけに行きましょう。
平等院への参道にはお茶の香ばしい香りが漂います。抹茶団子や宇治茶のお店を見ながら参道を進みます。10円玉に描かれた絵でお馴染みの平等院は、丹土の赤色の端正な姿を池の水面に映しています。今にも動きそうな雲中供養菩薩像や美しい姿の梵鐘をじっくり味わいましょう。
(担当講師:太田貴子)
宇治市は京都市の南東部と接し、京都駅からJR奈良線で約30分、祇園四条駅より京阪電車で約30分のところに位置している。人口は約18万人(2019年)。京都府内では京都市に次いで2番目に人口が多い。宇治市は北・東・南の三方を山に囲まれ、西にはかつて巨大な巨椋池があったので、「内なる土地」という意味の「うち」が転じて「うじ」になったと言われる。かつては「菟道」と書いて(うぢ)と呼んだとの説もある。1994年に世界遺産に登録された「古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市)」のうち、平等院と宇治上神社の2つが宇治市内にある。
醍醐寺(だいごじ)は、「古都京都の文化財」として世界遺産に登録された場所の1つ。874年に空海の孫弟子、聖宝(しょうぼう)により笠取山山頂に創建された。聖宝は山頂付近を醍醐山と名付けた。醍醐とは、牛乳を精製して作る液状のもので、究極の美味と伝えられ、尊い教えの比喩としても使われる。現在でも「醍醐味」といった表現が残っている。創建の縁起に残る「醍醐水」は、現在も枯れることなく湧き続けている。
醍醐寺は、山岳修験道の霊山として発展した「上醍醐」と、醍醐天皇の帰依を受けて大伽藍に発展した「下醍醐」に分けられる。両者を合わせて敷地は200万坪(約660万㎡)に及ぶ。
萬福寺は、日本三禅の一つ黄檗宗(おうばくしゅう)の大本山。中国から渡来した僧、隠元隆琦(いんげんりゅうき)によって創設された。
明末期の高僧として知られていた隠元を1654年に日本に招いたのは、鎖国中の日本で唯一外国人に開かれていた長崎で唐寺(とうでら)と呼ばれた、在留中国人を檀家とする寺の住職だった。
萬福寺の開創は1661年。現在も創建当時そのままの姿を保つ。チーク材を使った本堂の「大雄寶殿」では、中国の仏師が掘った布袋(弥勒菩薩)像、十八羅漢像等が名高い。