鈴木大拙は『禅と日本文化』全七章を展開するにあたって、冒頭に禅への入り口として「第一章 禅の予備知識」を置いています。
禅、そして仏教をほとんど知らない欧米人読者への導入部です。
禅語でいえば、大拙の「老婆心」と「深切」でしょう。
この短い巻頭言で、大拙はもしやれば何千ページにもおよぶ、仏教の歴史や教義についてはあえて触れず、ずばり「禅とはいったい何をするものなのか」、「禅の中身は何なのか」をわかりやすいたとえ話を使って、一気に引き込みます。
「不立文字」をモットーとする禅は、言葉や論理を用いず、
あくまで個人の直接体験の中から覚醒し、悟りを開くものとされます。
【学びのポイント】
1.禅と仏教はどう違う?
「禅は長年、インド・中央アジア・中国において発展するにしたがって、その周りに堆積してきた表面的な考えを取り除き、ブッダの根本精神を見つけようとするものだ」
2.ブッダの根本精神とは何か
「それは般若と大悲である。わかりやすくいえば、知恵と愛。」
般若を獲得すれば、一切の個人的利益や苦痛から離れ、愛を万物に及ぼすことができる。
この愛、大悲によって万物は成仏できるのです。
しかし、人は無明と業(カルマ)にとらわれて、般若を目覚めさせることができない。
さて、ではどうすればいいか。そのトレーニングとは。
・キーワード →般若、大悲、無明、業
3.般若を目覚めさせる、たとえ話「夜盗術の相伝」
泥棒の親が、わが子供にその秘伝を伝えんとして、わが子を盗みの現場で突き離し、
絶体絶命のピンチの真っただ中に放置する…・。(『五祖録』法演)
4.悟りのトレーニング、公案問答
禅、とりわけ臨済宗では、師より与えられた問(公案)を追求し、
考えに考え抜いて答えを探すことで悟りを開こうとします。
弟子「仏法とは何ですか」
師「わしゃ知らぬ」
弟子「ではどなたが知っていますか」
師 (黙って部屋の柱を指さす)
(例:庭前柏樹子の公案 『無門関』)
禅は言葉や論理では決して答えが見つからず、逆に論理を越えたところに直感的な智慧を獲得しようとします。
5.剣豪の禅的トレーニング実例
剣術修行の若者が、達人と思われる、山奥の仙人のような翁に弟子入りした。日々命じられて、日常雑務をこなすうちに、ある日師の無心の反応に、剣の修行の極意を悟る。
剣豪宮本武蔵が、山奥に隠退した塚原卜伝から秘伝を授けられる、という江戸時代の巷談から、禅が真理をみつける方法を示唆しています。
6.知識には三種ある
・他から学ぶ学習的知識
・自らの観察と実験を加えた科学的知識
・深く存在の基礎に浸透する直覚的知識
このうちの第三の直覚的知識こそ禅が呼び覚まそうとするものであり、上のトレーニングで獲得しようとしたものなのです。
全日程、開始は13時~14時30分。第1回は、15時まで。内容により、15時まで延長することがあります。
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日程 |
本年度企画 |
昨年度2021年実施 |
講師/備考 |
前期 |
第1回 |
2/1(火) |
事前説明「鈴木大拙を学ぶ」 |
なし |
米原亮三 |
第2回 |
2/22(火) |
第1章/禅の予備知識 |
第1章/禅の予備知識 |
水野聡氏 *前回2021年の受講者(会場・Zoom・動画受講)が本講義を再度聞く場合は、受講料を減免する。 |
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第3回 |
3/22(火) |
第2章/禅と美術① |
第2章/禅と美術 |
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第4回 |
4/26(火) |
第2章/禅と美術② |
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第5回 |
5/24(火) |
第3章/禅と武士① |
第3章/禅と武士① 第3章/禅と武士② |
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第6回 |
6/28(火) |
第3章/禅と武士② |
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第7回 |
7/26(火) |
第3章/禅と武士③ |
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後期 |
第8回 |
8/23(火) |
第4章/禅と剣道① |
なし |
水野聡氏 |
第9回 |
9/27(火) |
第4章/禅と剣道② |
なし |
水野聡氏 |
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第10回 |
10/25(火) |
第5章/禅と儒教 |
なし |
水野聡氏 |
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第11回 |
11/22(火) |
第6章/禅と茶道① |
なし |
水野聡氏 |
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第12回 |
12/13(火) |
第6章/禅と茶道② |
なし |
水野聡氏 |
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第13回 |
1/24(火) |
第7章/禅と俳句 |
なし |
水野聡氏 |
◎メインテキスト
「禅と日本文化」岩波新書 800円
*受講までに、各自ご購入下さい。
〇参考テキスト
(NPO日本文化体験交流塾発行)
・対訳「禅と日本文化」
Zen and Japanese Culture 講談社
仏教(禅)学者、思想家(1870~1966)。石川県金沢市に生まれる。東京帝国大学に学び、鎌倉円覚寺で修行する。1897年より渡米、以降アメリカの大学やヨーロッパで大乗仏教思想、とくに禅思想を広く世界に紹介し、海外に“ZEN”ブームを引き起こした一人となる。『禅と日本文化』をはじめ、著書約100冊の内23冊が、英文で書かれている。梅原猛曰く、「近代日本最大の仏教学者」。
◆水野聡氏
古典翻訳家、中世日本文化史講師。
能、茶道、日本庭園、武士道、俳諧、禅など日本の中世の芸道、美学、精神文化を専攻。これら古典名著を現代語訳にて執筆、発刊しています。
オフィシャルホームページ【言の葉庵】では、自著を中心に千利休、世阿弥、一休宗純、宮本武蔵、松尾芭蕉等の名言名句を解説、紹介。いにしえの偉人、達人から、今日本人として美しく、強く生きるための知恵を学び、広く普及させるため、全国カルチャーセンターにて各講座を開講している。古典名著により親しむための丸秘原典読解教室も展開中。
著書に「強く生きる極意 五輪書/宮本武蔵著 水野聡訳(PHPエディターズグループ2004.8)」、「現代語訳 風姿花伝/世阿弥著 水野聡訳(PHPエディターズグループ2005.1)」、「南方録 現代語全文完訳/南坊宗啓著 水野聡訳(能文社2005.12)」、「葉隠 現代語全文完訳 山本常朝/田代陣基著 水野聡訳(能文社2005.12)」等がある。
●IJCEE関東本部 機械振興会館内 *当日、本部前に貼り出すスケジュール表をご覧ください。
機械振興会館
◆〒105-0011
東京都港区芝公園3-5-8 本館B109
◆最寄りの交通機関
・東京メトロ日比谷線:神谷町駅下車 徒歩8分
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